特急列車の車両、停車駅、ダイヤの設定について





「飯田線内のボトルネックとその改良方法、改良箇所について」で記述したように、
飯田線、そして中央線や篠ノ井線には数多くの急曲線、急勾配が存在します。
飯田線特急には、この厳しい条件の下で速度を出す事が可能な車両が求められます。


1.「曲線の通過速度が高い車両――振り子式車両、車体傾斜制御装置搭載車両」

「スーパーあずさ」E351系

振り子車両、曲線で車体を傾けることで曲線の通過速度を向上させた車両です。
上の画像は、松本駅と新宿駅を結ぶ特急「スーパーあずさ」の振り子式車両、E351系です。
長野駅と名古屋駅を結ぶ特急「しなの」の383系も、同様に振り子式の車両となっています。

振り子式車両は大変優秀ですが、車両自体の価格が普通のものに比べ高い上、
性能を発揮するには、架線の張り替えや曲線の構造強化といった工事への投資も必要になります。

一方、簡易振り子式ともよばれる車体傾斜制御装置を搭載した車両は、
振り子式と比べ通過速度が低い代わり、コストの大幅な抑制が可能となっています。
このため、私鉄やローカル線の特急、そして新幹線に採用されています。

以上のことから、本案では、車体傾斜制御装置を搭載した特急車両を採用することとしました。




2.「勾配に強い車両――高いモーター搭載車両の比率(M:T比)」

「しなの」383系

一般に、電車はモーターを搭載した車両と搭載していない車両とが組み合わされて1つの編成を成しており、
この編成あたりのモーター搭載車両の割合を「M:T比」といいます。勾配でスピードを出すには
この比率が高い――すなわちモーターの搭載車両を増やすことが必要となります。
画像の特急「しなの」用383系や、特急「あずさ」用のE351系、E257系は、M:T比が1:1かそれ以上です。

以上のことから、本案では、M:T比が1:1もしくはそれ以上の特急車両を採用することとしました。

なお、最高速度は「あずさ」「しなの」のダイヤに合わせるため、130q/hとします。
1編成あたりの両数は、需要の絶対数が少ないと推察されるため、2〜3両が妥当だと考えます。

ちなみに、現在飯田駅〜豊橋駅の区間で走っている特急「伊那路」に使用されている373系は
M:T比が1:2と、山岳線である飯田線には本来不向きな、非力な車両です。
最高速度も120q/hで、「あずさ」「しなの」のダイヤに合わせられません。

「同じ飯田線を走る特急車両なのだから、373系を使えばよいのではないか」という意見を
持たれた方もおるでしょうが、高速バスとの競争力が求められる以上は、不適切と言わざるを得ません。
特急「伊那路」も車両が変われば所要時間を大きく縮められるでしょうが、それは別のお話です。




3.停車駅およびダイヤの設定について

特急や新幹線の運行に当たって、一番議論に熱を帯びがちなのが停車駅とダイヤについてです。
本案では、1980年代末まで運行されていた急行「天竜」および急行「こまがね」の停車駅を
参考とした上で、所要時間、停車駅同士の間隔、利用客数の大小から停車駅を判断しました。

下の図は、急行「天竜」、急行「こまがね」の停車駅を示したものです。

急行「天竜」停車駅

急行「天竜」、急行「こまがね」の停車駅は、画像にあるように飯田駅〜辰野駅の間で
途中7駅、合計9駅に停車し、その所要時間は最速で約1時間35分でした。

しかし、飯田線特急には競争力確保のため更なる時間短縮が求められることから、駅間距離や
推定される旅客数を勘案し、急行停車駅のうち元善光寺、市田、飯島を削減して
途中停車駅を4駅に、合計6駅の停車とし、飯田線の改良と合わせて所要時間の大幅短縮を図ります。


特急の乗り入れる中央線では、停車駅、所要時間共に既存の「あずさ」と同じと仮定しました。
ただし、急勾配・急曲線の連続する篠ノ井線は、既存の「しなの」よりも所要時間を
多めに設定する事にしました。数字を出すと、松本駅〜篠ノ井駅の区間で+5分です。




ちなみに、辰野駅〜塩尻駅では経路が2種類ありますが、いわゆる「辰野支線」と呼ばれる
中央線の旧線は線形が非常に悪く、岡谷経由より3q短い走行距離の利点を相殺してしまいます。
所要時間がほぼ同じであれば、乗り継ぎを含めた岡谷駅での需要を捨てるわけにはいきません。
このため、経路は辰野駅〜岡谷駅〜塩尻駅で設定しました。


停車時間は、方向転換・「あずさ」との連結の必要な岡谷が3分、乗降客の多い松本駅で2分とした以外は
各駅とも1分と設定しました。多めに確保した停車時間で、駅間所要時間の計算誤差を吸収します。
また、停車駅以外では列車交換による停止が無いとしました。中央線、篠ノ井線内でも同様です。



なお、新宿行き特急については、岡谷駅で「あずさ」、もしくは甲府駅で「かいじ」に併結するとの
前提で想定しております。2〜3両の短編成が単独で、大変混雑する八王子行以東に乗り入れるのは
非現実的であり、不可能と考えるべきだからです。

ただし、ここで以下の問題や課題が発生します。検討が必要です。

 @飯田線特急用に想定した車両は車体傾斜制御装置搭載車両であり、
   振り子式車両である「スーパーあずさ」用E351系との併結はおそらく不可能。

 A通常車両である「あずさ」「かいじ」用E257系との併結は可能だが、
   併結中の車体傾斜は不可能。
   すなわち、併結後の走行時間は「あずさ」と同じになり、中央線での時間短縮は不可能。
   加えて、連結面の貫通扉が東京寄りにしか無く、特に「かいじ」との併結に制限が生じる。

 A飯田線はJR東海の管轄、篠ノ井線と中央東線の塩尻以東は東日本車両の管轄である。
   併結を考えると、JR東日本の規格で特急車両を製造する方向でほぼ固定される。

 B他列車との併結は、ダイヤが乱れた際の悪影響が大きく、また波及しやすい。





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