飯田線以外のボトルネック箇所とその改良
飯田線内のボトルネック箇所とその改良については既に触れましたが、飯田線特急が
乗り入れることになる中央本線や篠ノ井線にも、ボトルネック箇所は存在します。
これは現在走っている「しなの」や「あずさ」の足枷にもなっています。
本章では、代表的なボトルネック箇所の紹介と、改良が可能な区間について紹介します。
1.篠ノ井線のボトルネックとその改良
篠ノ井線は、塩尻駅から、長野駅の手前にある篠ノ井駅までを結ぶ全長66.7qの路線で、
飯田線特急の内、長野行き特急が乗り入れることになる路線です。
このうち、ボトルネックとなる区間は、拙いですが下図中の青と黄で着色された38.5qの区間です。
ボトルネックとなっている原因については、以下の様な理由です。
@ボトルネック区間は1時間に往復1本の特急「しなの」と普通列車が走り、また、貨物列車や
回送列車も少なくない。にも関わらず、全区間にわたり単線である。
Aボトルネック区間の中間部は松本盆地や長野盆地よりも標高が高い。
このため、ボトルネック区間の大半が25‰もの急勾配で形成されている。
B急勾配区間が長い為、所要時間は走行距離の割に長くなってしまっている。
25‰とは、1000m走る間に25mの高さを上り下りする事を意味します。
自動車であればそれほど問題にはなりませんが、鉄道にとってはかなりの急勾配です。
単線については、松本駅のすぐ北側にも別に存在しますが、距離が短いので今回は省略します。
以上の問題は、特に列車の本数を増やすことが難しい事、普通列車が「しなの」を退避するため
長時間の停車を強いられる事、ダイヤの乱れが大きくなる事として表れています。
抜本的な改良はコスト的に不可能です。しかし唯一、国鉄時代末期に路線の付け替えが行われ
しかも、複線化を前提とした構造になっている区間があります。
それが、図中に黄色で示す明科駅〜西条駅にある9.0qの区間、白坂トンネルで貫かれた区間です。
9.0qもの間25‰の急勾配が連続する上、篠ノ井線内で最長の単線区間になっていることから、
1988年の開通以来、ずっと篠ノ井線の最ボトルネック区間になってしまっています。
ここの複線化を実現することで、飯田線特急を安定的に走らせる余裕が生まれるだけでなく、
「しなの」の遅延抑制や、普通列車の所要時間と遅延の大幅な抑制といったメリットが生まれます。
また、田沢駅〜明科駅の6.6qが既に複線であるため、メリットはより大きくなります。
正直、たとえ飯田線特急が実現せずとも、県、自治体、JRの協力による早期実現が望まれます。
2.中央本線(中央東線)のボトルネックとその改良
飯田線特急の内、新宿行き特急が乗り入れることになる中央本線には、
大きく分けて2箇所のボトルネックが存在します。岡谷駅〜茅野駅手前までの単線区間と、
八王子駅〜新宿駅までの多数の通勤列車と並走する区間です。
岡谷駅から、上諏訪駅〜茅野駅にある普門寺信号場までの11.5qの区間が、
諏訪湖の外縁をなぞるように単線区間になっています。ここが第一のボトルネックです。
篠ノ井線よりも本数が多いために対向列車を待つ割合は高く、
所要時間や遅延時間の増大といった影響も少なくありません。しかし、周辺は住宅密集地であり
今後も完全な複線化は不可能と断言できるレベルです。唯一、複線化に向けた準備が進められ
用地の大半を確保できているのが、岡谷駅〜下諏訪駅の4.1qです。
この区間の複線化が実現すれば、単線区間は距離にして現在の65%にまで圧縮でき
下諏訪駅〜上諏訪駅〜普門寺信号場のみとなります。
これにより、普通列車の所要時間と遅延の抑制のほか、列車の交換待ちを行っている
「あずさ」にも数分単位で所要時間の短縮が期待できるようになります。
岡谷駅〜下諏訪駅の区間は現地調査を行っていますので、別ページで紹介します。
中央本線第二のボトルネックは、八王子駅〜新宿駅のいわゆる東京近郊区間です。
ここには日中ですら片道10本を超える快速、普通列車が走っています。
特急も、通勤列車の間に挟まれてダンゴ状態となり、仲良くゆっくり走らざるを得ません。
走行距離も37.1キロと長く、「あずさ」の所要時間増大への影響は相当なレベルです。
この区間の内、立川駅〜三鷹駅の13.4qについては複々線化の計画もありますが
残念ながら実現性は限りなく低いようです。
そうなると、以下の2点による効果が現状で唯一期待できることといえます。
@通勤用車両の新型車両への完全な置き換え。
A現在工事中の、立川駅〜三鷹駅の高架化事業の完成。
前者については、旧式の車両が1編成でも残っている限り、列車のダイヤはもしもの場合に備えて
古い車両に合わせたものになっています。(もしかしたら、間違って認識しているかも…)
置き換えが完了すれば、ダイヤも新しい車両専用の速いダイヤに切り替わります。
後者についても同様で、ダイヤが新しいものに切り替わります。
これらにより、多少は「あずさ」の時間短縮が望めると考えられます。
東京近郊区間については、2011年に高架化が完了する予定で、車両の更新も遠からず
行われるでしょう。今はただ待つばかりです。