第四章 城北線の完全開業後の姿





これまで述べてきたように、城北線は都市鉄道として飛躍する潜在力を秘めていながら。
建設費の返済に関する制約の為、最低限の設備で今も営業を続けています。
現在の城北線の状況を「暫定開業」と定義し、
制約さえ取り払われれば容易に実現可能な改善と、これによる効果を検討していきます。

まずは、前提条件となる「完全開業」後の城北線がどのような状態であるかを
各観点から検討し、その中でも次章以降の旅客編と貨物編の共通項を取り扱うこととします。



1.電化

城北線にきめ細かなダイヤで通勤電車を走らせるにしても
松本・長野への貨物列車を走らせるにしても、非電化のままでは話になりません。
城北線を電化し、電車や電気機関車を走らせれる様にしなければなりません。


架線柱の基礎

今の城北線は非電化で、電柱の1本も建っていませんが、元々は全線が電化される予定でした。
実際、城北線の高架線を見ると、上の画像のように電柱を建てるスペースを等間隔で
確認することができます。これは、、JR化後に開業した尾張星の宮−枇杷島間も、
既に開業している愛知環状鉄道の旧瀬戸線区間も同様です

このため、城北線を電化するに際して、電柱の建柱や、架線張りといった通常の工事のみで
既存の高架橋を加工する作業は必要ありません。

懸念事項として、城北線で使用する電力を確保するために
新たに変電所を建設したり、既存の変電所を増強する必要が出てくる可能性が挙げられます。
ただ、城北線は全長が11q強と短く、また後述しますが想定される本数も
決して多くは無い為、既存の発電所の出力増強で済むと推測されます。




2.名古屋駅への乗り入れ

城北線を利便性の高い旅客線にする重要な手法の一つとして
名古屋駅への乗り入れは電化と同列で挙げなければならない重要項目です。

ここで、城北線は名古屋駅の一つ手前、枇杷島駅でJR線と接続しています。
また、城北線の線路を枇杷島駅から名古屋駅方面へと辿ると
あおなみ線名古屋駅のホームへ到着します。さらに進めば、
あおなみ線や名古屋貨物ターミナル駅に至ります。

貨物列車についてはJR線から城北線とへの乗り入れについてだけ言えば、現状でも可能です。
旅客列車についてはあおなみ線との規格統一(電車化)が必要となりますが
それさえクリアすれば城北線の名古屋駅乗り入れはすぐにでも実現可能です。

懸念事項として、枇杷島駅のすぐ手前、JR線と分岐する地点で城北線が
一時的に単線になっている箇所が挙げられます。
単線になっている理由に深い意味はないでしょうが
本数を増やそうとすれば真っ先にボトルネックとして顕在化する箇所です。
構造物が複線用になっているので、複線化工事を阻害するような問題は無く
完全開業の実現と並行して単線も解消されているべきでしょう。




3.JR勝川駅への延伸工事と乗り入れ

中央線を走る貨物列車を城北線経由に変更する場合、
JR勝川駅と物理的に繋がっていない城北線勝川駅をどうにかする必要があります。
旅客列車も、仮設駅である現在の勝川駅のままでは低い利便性が改善されません。

勝川駅高架化工事完成図

数年前から行われていた高架化事業の完成したJR勝川駅は
城北線の乗り入れを前提としており、中央線ホームに抱きかかえられるように
城北線用のホームと乗り入れスペースが確保されています。
しかし、城北線勝川駅のホームから乗り入れ部分の高架を見ると
かなりの急勾配で一度下らないとレベル(水平面)が繋がらないようにしか見えません。

実際にもその通りの構造になっています。これは、瀬戸線時代に検討されていた
勝川駅の設計がその後変化したためであり、乗り入れを行うに当たっては
城北線をある程度の長さ、200〜300m程度取り壊し、造りなおす必要があります。

これは時代が経って情勢が大きく変わった以上、止むを得ない事です。
城北線と同じく、貨物線として建設された路線の一部を転用して開業した
東京のりんかい線も、大崎駅〜東京テレポートの路線を新規に建設するため
既に完成していた地下トンネルを170m取り壊し、分岐線を造り直した前例があります。




4.東海交通事業城北線からJR城北線への転身

城北線が第三セクターでもJR東海でもなく、JR東海の子会社である
東海交通事業の路線として運用されているのは、第三章で記述の理由から
鉄道・運輸機構に支払う必要のある賃貸料を少しでも抑える為と推察されます。

城北線が開通する前に定められた平成4年(1992年)の運輸政策審議会答申(12)号では
城北線は「JR城北線」となっており、、元々はJRの路線として開通される予定だった
可能性が非常に高いといえます。

このため、賃貸料を払い終える平成44年(2032年)か、それより前に
賃貸料の計算から管理費が除外される等で城北線への投資をためらう必要が無くなれば
JR城北線として、元の鞘に収まると考えられます。

JR城北線となれば、運賃や車両は他のJR在来線と同一の基準となり
投資を回収できると判断されれば、電化工事、電車の投入、勝川駅への接続工事等も
実施され、城北線が自然と本来から持っていた潜在力を発揮するでしょう。
そうなれば、沿線の利便性は格段に向上し、名古屋市北区地域とその周辺の発展や
貨物運用の効率化といった本来の機能を果たすであろうと推察されます。

ただ、具体的な中身は効果はもっと調べなければ見えてこないため、
これについて次章以降で解説することとします。



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