第五章 城北線の完全開業による効果〜旅客編〜
旅客編ということで、本章では通勤路線としてどのような素養を秘めているかにスポットを当て
その効果と整備が適当であると考えられる設備を検討しました。
なお、電化や名古屋駅・勝川駅への乗り入れといった共通項については
既に述べているので解説を省略し、前提条件とします。
1.あおなみ線との相互直通運転、一体化運用
城北線が名古屋駅への乗り入れを行うにあたり、どのホームを使用するかについては
城北線の延長線上に存在するあおなみ線ホームが適当です。
JRホームは既に余裕が無く、また通勤列車が頻繁に通る東海道線を平面交差で横断
しなければ到達できないため不適当です。
あおなみ線のホームを使用する場合、少なくとも城北線の車両規格を
あおなみ線と共通にする必要があります。代表的なものとして、ホームドアへの対応が必要です。
あおなみ線は全ての駅にホームドアが設置されており、車両の扉の数、設置位置、幅が制約されます。
あおなみ線で使用されている名古屋臨海高速鉄道1000形は
機器や基本設計をJR東海の313系をベースにしており、扉位置や扉幅に差異は無い は ず です。
313系の形式図を持っておらず、比較して確認できないため、確証を得られません・・・。
もし扉位置が異なっている箇所が1つでもあれば、該当箇所のホームドアを全駅分改修する必要が出てきます。
313系と1000形の扉位置、扉幅が同一であると仮定すれば、313系のあおなみ線内への乗り入れには
何ら支障がありません。愛知環状鉄道の2000系も313系とほぼ同一設計であり、同様の事が言えます。
このため、城北線に導入する車両は、313系か、313系と同一仕様の車両である必要があります。
なお、あおなみ線1000形と同一仕様の車両を導入する場合、同形式が車の衝突を想定しない構造のため
踏切の存在しないあおなみ線、城北線での運用に限定されます。
そのほか、城北線とあおなみ線がそれぞれ名古屋駅で折り返し運転をしようとすると
1面2線しか無いあおなみ線名古屋駅ホームがほぼ常時塞がってしまいます。
こうなると、同じ線路を共用する貨物列車が通過できなくなってしまうので
折り返しは出来る限り回避しなければなりません。
解決策として、城北線とあおなみ線とで相互直通運転を行い、運用を一体化する事が挙げられます。
つまり名古屋駅の折り返し運転をせず、城北線の勝川駅からあおなみ線の金城ふ頭駅まで
列車を通しで走らせ、実質的に一つの路線としてしまうのです。
同じ名古屋駅では、あらゆる方面からくる非常に多数の列車をたった3面2線で捌くため
はるか昔から名古屋鉄道が名鉄名古屋駅を通過駅化させ、同駅の始発着列車を
ほとんど設定していません。要は名鉄の真似をするのです。
運用する車両の種類の差異も含め、一体化運用を遮るようなハードルはほぼ無く
あおなみ線のラッシュ時8本/h、日中4本/hという本数も、完全開業後の城北線では
過剰にはならないでしょう。このため、上記の様な運用となる可能性が高いと推察します。
2.ホーム延伸と、各駅へのホームドアの設置
ホームドアの設置されているあおなみ線と一体化した運用を行うためには
城北線の駅にもホームドアを設置する必要が出てきます。
これ自体はホームドア分の追加コストが発生するだけで特に問題はありませんが
城北線内には、ホーム長を延伸する必要もある駅が存在します。
城北線の駅はいずれも、少なくとも4両分までホームを拡大できるスペースは確保されており、
ホーム延伸に際しても、特に問題は無いと考えられます。
ちなみに、地元請願駅として市の負担で後から造られた比良駅は、当時のパンフレットによれば
元々は山田駅、楠駅の2つ建設する予定だったそうです。これを1つの駅で間に合わせるため
それぞれの住宅地から離れた、中間地点の緑地公園の近くに建設されました。
完全開業を機に、改めて駅の位置を再検討した方が良いのかもしれません。
3.駅前広場や駐車場、コンコース、自動改札などの設備充実
現在、最低限の投資と維持管理コストで運営されている城北線は
当然のように駅前やエキナカもがらんどうの放置プレイ状態です。
沿線住民を利用客として確実に取り込むためには、このような線路外設備の
充実も必要となります。
不足している駅には、駐車場や駐輪場を設置してP&R(パーク・アンド・ライド)等を促し、
駅前広場か、すくなくともバス停を設置してバス路線との接続を図り、
エスカレータやエレベータの設置で駅をバリアフリー構造とし、
他の路線に合わせて自動改札機などを設置する事は最低限必要でしょう。
また、需要が見込めるのならばエキナカに店舗を誘致したり、
コンコースを拡張してエキナカのスペースを新たに確保する事も考えられます。
城北線が便利になれば、その恩恵を受ける沿線駅とその周辺地域は
これまでと違った発展を見せる事になります。城北線が完全開業するならば
先だって沿線地域の将来ビジョンの見直しと、都市計画への反映も検討が必要になります。
4.勝川駅以北のJR中央線、愛知環状鉄道との相互直通運転
JR勝川駅の城北線スペースは、JR中央線に乗り入れが可能な構造になっています。
このため、中央線・愛知環状鉄道と城北線との相互直通運転も可能です。
ただ、城北線に乗り入れてしまうとJR中央線の大曽根、千種、鶴舞、金山の各駅から
名古屋都心部へ向かう需要を取り込めません。また、中央線・愛知環状鉄道線から
あおなみ線・城北線の途中駅へ向かう需要が大きいとは考えられません。
中央線と城北線の走行距離が殆ど変わらないため、所要時間の短縮も望めません。
このため、相互直通運転の実質的な目的は、名古屋駅へと向かう旅客の一部を
城北線に回し、中央線の混雑を緩和する事になるのではと推測します。
その場合、所要時間の短縮と旅客の分離による混雑緩和が期待できるため
直通列車は快速として、勝川駅〜名古屋駅間を通過するのが理想です。
しかし、現状で通過列車を退避可能な駅は城北線内に存在しません。
小田井駅にはホームを増設できるだけの用地が残っていますが
高架については新規に増設する必要があり、コスト的に非現実的です。